Lick-G「Trainspotting」

- アーティスト: Lick-G
- 出版社/メーカー: GENESIS/DREAM BOY
- 発売日: 2017/02/15
- メディア: CD
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日英ハーフの血を持つシュッとした出で立ちのせいか、高校生 RAP 選手権出身のラッパーの中でも何処か大人びた異質の雰囲気を纏っていた彼。バトルの際にも見せていた柔らかく流れるようなフロウと流暢なライミング、そのラップ捌きはこのオリジナル作でも存分に発揮されています。ビートは全編トラップで統一。しかしながら流行に沿うだけではなく、表題曲「Trainspotting」での目まぐるしい早口が乗っかって生まれる可変速グルーヴだったり、「Hollyview」で見せる瑞々しいメロウ感など、トラップならではのダークで理知的なムードが彼の持つスキルでさらに深みを増しています。そして全体に共通して最も印象に残るのは、内省的とも言える繊細さ。歌詞の内容は主に自己賛美や成り上がりへの野心といったものですが、彼がそれを歌うとハードコアだったりマッチョな印象にはならず、むしろアルバム冒頭のアカペラ曲「I'm Already Dead」にある、他人の真似ではなく自分だけの道を行くというアティテュード、その裏側にある孤独感や痛み、憂いを色濃く滲ませているように感じる。そこには彼の人物像が実にリアルに投影されているように思います。
Rating: 8.1/10