Grouper 「Grid of Points」

Grid of Points

Grid of Points

カリフォルニア出身、Liz Harris によるソロユニットの3年半ぶり11作目。


前作「Ruins」はポルトガル滞在時に録音された作品とのことでしたが、今作は米国ワイオミング州に渡って1週間ほどで完成させたそう。ワイオミング州というのがどんな場所か調べてみるとまるで大自然の写真しか見つからないような僻地で、なるほど彼女にとってはインスピレーションを得やすい環境だったのかもしれません。シンセ類は用いず生ピアノと Liz 本人の多重コーラスのみの簡素なアレンジ、そこに教会の聖歌を思わせる深くナチュラルな音響処理を施すという、その手法自体は前作からそのまま地続きのものですが、ただでさえシンプルだった音楽性がここではさらにストイックさを増し、収録されたのはわずか7曲21分のみ。しかしその中に込められた物悲しいメロディ/ハーモニーの美しさは、そのシンプルさ故にもしかすると彼女のこれまでのキャリアで最も純度の高いものかもしれません。「Thanksgiving Song」ではほとんど消え入りそうになるまで音が遠くなり、終曲「Breathing」では列車の過ぎる音の後に静寂だけが残る。ノスタルジックな感傷が一層濃密なものとなった楽曲群は、聴き終えた後には胸の内にぽっかり大きな穴が開いたような心地に。

Rating: 8.2/10


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