Aphex Twin 「Collapse EP」

約2年ぶりのリリースとなるミニアルバム。


10年以上の沈黙が嘘だったかのように、ここ数年は毎年何かしらの形で音源リリースを重ねている Richard D. James 御大。今作は2014年作「Syro」の方向性を引き継ぎつつ、前作「Cheetah EP」では低く抑えられていた BPM が反動のごとく解放され、これぞ Aphex Twin 印と言えるドリルンベースの応酬となっています。本能の赴くままなようで実は緻密な計算の元に構築された(多分)予測不能の複雑な疾走リズムパターンが目白押しなわけですが、「Syro」以降と言える丸みと粘りの強さを併せ持ったビートの質感、そしてスッキリと洗練された立体的な音の配置により、アヴァンギャルドさよりもフィジカルに訴えかける即効性、ポップな印象の方が先立っているように感じます。無機質な空気感の中にローラーコースター的な緊張感を打ち出した「T69 collapse」、そこはかとなくアフロビートの躍動感まで携えたファンクネスが直接的に身体を突き動かす「abundance10edit [2 R8's, FZ20m & a 909]」など、Aphex Twin としての記名性を維持しながら、ここに来てまた何とも伸び伸びとした自由な広がりを見せているのだから、その底なしの創作意欲に脱帽せざるを得ない。

Rating: 7.8/10



Aphex Twin - T69 Collapse