踊ってばかりの国 「光の中に」

光の中に

光の中に

神戸出身の5人組による、約1年ぶり6作目。


前作「君のために生きていくね」から新メンバーが加わり、バンドが新章へと移行したことでバンマス下津光史の創作意欲にも脂が乗ってきているのかもしれません。60年代サイケデリック/フォークロックといった彼の出自、原点を改めて見つめ直したと思われる、前作以上に混じり気の無いオールディーズ志向。牧歌的で優しく、場面によっては何処かスピリチュアルな思想も見え隠れし、極めて開放的。ヴィンテージ的な音の響きに拘った純粋なロックンロールサウンドは、ともすれば浮世離れした多幸感、桃源郷のような雰囲気すら醸し出してる。ただこの音世界が完全に悟りを開いたが故の境地であり、確固たる安寧を感じさせるものかというとそうでもなく、それこそかつてのヒッピー文化を思わせるような脆弱さも背後に見える気がするのは、下津光史という個人のキャラクターを音に重ねてしまっているからかもしれません。彼は少し前になかなか強烈な傷害事件を起こしており、結局逮捕とまではいきませんでしたが、その時の言動とこの音を重ねるとあまりに刹那的と言うか、不安定な印象の方がむしろ強くなる。それはそれで泥臭い人間味があるとも思いますが。

Rating: 7.1/10



踊ってばかりの国『光の中に』 Music Video(2019)