くるり 「thaw」

過去の未発表曲を集めたコンピレーション盤。


今作の収録曲については岸田繁本人によるライナーノーツが note で公開されており、それ故に楽曲毎の狙いや背景を把握しやすく、スムーズに楽曲に没頭できるかと思います。モノによってはデビューしたての頃だったり、逆に数週間前に録ったばかりだったり、曲によって制作時期も音楽性もメンバー編成もまちまち。それらの共通点を挙げるとするならば、いずれも収録を予定していたアルバムの流れに結局そぐわなかったからオミットされた曲、ということかと思います。それは言い方を変えれば、アルバムの中に置くと良くも悪くも異彩を放つ、全体のバランスを崩してしまうほどの存在感を持つ、何処か捻れたパワーを持った曲でもあるはず。個人的には「心のなかの悪魔」「鍋の中のつみれ」の2曲が特に印象的でした。どちらも2009年作「魂のゆくえ」の頃に制作されたとのことで、音楽的には牧歌的なブルースロックに纏まっていますが、迷路のごとく入り組んだ自分の心の中を慎重に探索し、そこに潜んでいる闇を懐中電灯で照らし出しているような、曲調とは裏腹の言葉の冷たさ、鋭さに思わずハッとさせられる。そして2011年と現在を繋ぐ「evergreen」の美しさ。

Rating: 7.7/10