Cavern of Anti-Matter 「Hormone Lemonade」
- アーティスト: Cavern Of Anti-Matter
- 出版社/メーカー: Duophonic
- 発売日: 2018/03/23
- メディア: CD
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のっけの「Malfunction」からいきなりの16分。「故障」といった曲名とは裏腹の精緻さで、簡素なリズムループとスペーシーなシンセ類の重層は何処となくノスタルジックな感触を残しつつ、気ままな宇宙旅行のような心地良い浮遊感とオプティミスティックな軽快さ、そこに中毒性のある恍惚を滲ませる、それはある種クラウトロックの醍醐味とも言えるもの。前作ではゲストヴォーカルを招いたりといった楽曲の多彩さを意識した面がありましたが、今作ではむしろその逆で、コアメンバー3人のみによる実験的なセッションをストイックに突き詰め、ますます濃密さを増しているように見えます。ただ長尺のインストゥルメンタルが多いという点では敷居は高いですが、 Stereolab 時代から地続きのさらりとしたラウンジテイスト、洒脱なポップセンスがどの曲でも発揮されているため、堅苦しさはさほど感じない。むしろ70年代風のチープな音作りも相まって、実験的ではありつつも牧歌的でファニーな印象があり、その演奏の深みに引き込まれそうになりながら少しばかり微笑ましく愉快な気分になってくる。熟練者たちによる自由奔放な音の遊びという感じ。
Rating: 7.1/10
国府達矢 「ロックブッダ」
- アーティスト: 国府達矢
- 出版社/メーカー: felicity
- 発売日: 2018/03/21
- メディア: CD
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正しく青天の霹靂というべき作品です。ひどく長期に渡ったレコーディング作業を経て構築されたサウンドは、全方位から音が飛び交ってくると言っても過言ではないくらい、様々なパートの音が様々な定位で鳴らされて絡み合う、その空間デザインの緻密さにまずは慄く。しかしながら実験的だったり小難しい印象はまるでありません。楽曲自体はむしろ旧来的なロックバンド編成が土台にあるもので、ブルース/ハードロックのダイナミズム、skillkills のリズム隊を迎えて強調されたファンク/ヒップホップのふくよかな躍動感、そして国府達矢の浪曲ばりにこぶしを利かせたソウルフルな歌唱、そういった様々な音楽要素がひとつの曲の中でグルグルと渦を巻き、そこから生まれる陽性のエナジーは極めてストレートなインパクトを持ったもの。ヴォーカルに限らず全てのプレイが歌心を感じさせるような有機的なうねりを見せ、それらが徹底的な調整を受けたプロダクションによって繊細かつビビッドな色調となり、大仰なアルバム表題に恥じないスピリチュアルで圧倒的な世界観を形成しています。ラストの余韻の深さに至るまでどっぷり濃厚な異形作。
Rating: 8.6/10