BUCK-TICK 「HURRY UP MODE」 「SEXUAL×××××!」 「SEVENTH HEAVEN」 「TABOO」 「悪の華」

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先日こんなサイトがオープンしまして、25年という歳月を目の当たりにして少し遠い景色を見る気分になるのでした。結成以来不動のメンバーで活動を続け、その間課外活動はあったものの解散や大きな活動停止は一度もなく、コンスタントに作品を発表してはチャート上位に送り込み、常に新しいスタイルを提示して我々を魅了してくれる。そんなバンド世界的に見てもなんて稀少な存在。来年でデビュー25周年ということでこのタイミングに乗っかり、カタログ総ざらい企画を始めたいと思います。25年というだけあって作品の量も半端ないですがお付き合いください。4日連続の1日目。



HURRY UP MODE(紙ジャケット仕様)

HURRY UP MODE(紙ジャケット仕様)

唯一のインディーズ作となる、記念すべき初フルレンス。


うっわ若い!当たり前だが声も音も若い!俺が持ってるのはリマスタリングされた後の音源なんですけど、それでもこの音の薄さペラさはどうにもならなかったのか。頑張って良く言えば初期 The Cure を彷彿とさせる、歯切れ良いクリーントーンの瑞々しさが詰まった80年代ビートロック。このダークな出で立ちでこれだけカラフルなポップネスを鳴らしてるというギャップも The Cure に影響を受けた故か。よく聴くと後ろの方でリズムギターがカコカコ鳴ってるんだけど、パッと聴きとてもギターが2本あるとは思えないアンサンブルの安さ。でもそれを乗り越えるとポップ曲として良い曲はあるんですよ。初期パンクの精神でニューウェーブを演ったような 「FLY HIGH」 「MOON LIGHT」 、妖しく淫靡なメロディが異色な 「ROMANESQUE」 、スカの性急さが意外にハマった 「FOR DANGEROUS KIDS」 など。まーでもあまりにも80年代という時代を感じさせすぎる刹那の徒花という感じですね。何よりもそのパッションが自らを創作へと向かわせた、青春という名の若葉の青い匂い。


Rating: 5.0/10



SEXUAL XXXXX!(紙ジャケット仕様)

SEXUAL XXXXX!(紙ジャケット仕様)

前作からわずか7ヶ月、メジャーデビュー作となる2作目。


方向性は変わらずサウンドのペラさも相変わらずですが、メジャー進出ということで全体的に音の統制が取られ、真っ当なヴァージョンアップを遂げています。当時は同郷の BOØWY の弟分的なポジションとして捉えられてたと聞きますが、確かに BOØWY イズムにも通じるオーソドックスなエイトビートの直線的アップテンポ曲がメイン。けれどもむしろ 「ILLUSION」 「SISSY BOY」 のようなミドルテンポの曲の方が、クリーントーンの音色を活かした鮮やかさ、瑞々しさが光ってると思います。他にはファンタジックとも言える可愛らしさに少々度肝を抜かれる 「DREAM OR TRUTH」 、ロカビリーのエッセンスが注入されたスウィングナンバー 「DO THE "I LOVE YOU"」 、何処か緊迫感のあるムードとメロディの切なさが合致した 「HYPER LOVE」 など。ちなみにラスト 「MY EYES & YOUR EYES」 は2007年にセルフカヴァーされており、そちらは初期のエッセンスを保ちつつ説得力がグッと増した仕上がり。並べて聴くとやはりこの頃の彼らは決して黒歴史ではなく、原点としてしっかりと根付いているのだなと。


Rating: 6.4/10



SEVENTH HEAVEN(紙ジャケット仕様)

SEVENTH HEAVEN(紙ジャケット仕様)

またも7ヶ月のショートスパンで完成した3作目。


この矢継ぎ早なリリースペース。当時は創作意欲が湧きまくっていたのか、バンドブームに乗り遅れないように周囲から急かされたのか。何にせよ次の手を出すには、それまでの流れを継ぎつつ新しい面も見せねばということで。初っ端から顎が落ちそうになるメルヘンインスト 「FRAGILE ARTICLE」 、マーチングドラムが快活な勢いを伝える 「CAPSULE TEARS -PLASTIC SYNDROME III-」 、優雅に揺蕩う初のスロウ曲 「ORIENTAL LOVE STORY」 、一転して奇天烈なシンセが飛び交うパンキッシュナンバー 「PHYSICAL NEUROSE」 と、作風を拡張しようとするアイディアがそこかしこに見られます。しかしそういった装飾が目立つ一方で、幹となるメロディは少々フックに欠ける気もする。目新しさはあるもののあくまでネタ的というか、従来の亜流という所で終わってしまってるようで、結局好きなのは彼らの王道と言える性急なビートロック曲 「...IN HEAVEN...」 だったり。あとラストのタイトル曲 「SEVENTH HEAVEN」 は軽快かつキュートなスウィング曲で、意外にオーセンティックなロックンロールも彼らの嗜好のキモにあったりするのかな、とか。


Rating: 5.8/10



TABOO(紙ジャケット仕様)

TABOO(紙ジャケット仕様)

初の海外レコーディングを敢行した4作目。


この辺から単なるポップバンドに留まらない、彼らのクリエイティヴィティが徐々に発揮されてきます。まずオープナー 「ICONOCLASM」 。機械的なフレーズの反復にほとんどポエトリーリーディングなヴォーカル、なのに全体の印象は妙にキャッチーという彼ら初の実験精神が詰め込まれたライブ定番曲にして意欲作。また低く這いずるようなベースが印象的な 「EMBRYO」 、イントロのパーカッションとシンセがまるでサバトの様相を呈する 「FEAST OF DEMORALIZATION」 など、ゴシック/ポジティブパンク方面のダークな影響が色濃く表れ出し、ようやくルックスと音が噛み合ってきた。その一方でパノラミックな世界観を鮮やかに広げる 「ANGELIC CONVERSATION」 、初のシングルとなった初期の代表曲 「JUST ONE MORE KISS」 といった従来の陽性ポップスもありますが、こちらの路線も軽薄さが抜けてきてアレンジが緻密になり、確実にクオリティの進化を見せています。キャリアの中では地味ながらも、初期と中期の架け橋となる何気に重要な作品。


Rating: 7.0/10



悪の華(紙ジャケット仕様)

悪の華(紙ジャケット仕様)

今井寿の逮捕事件を経て、1年ぶりとなる5作目。


タイトルがボードレールからの引用であったり、ジャケットもさらにゴシック方面へと邁進しておりますが、基本的にはやはり従来の BUCK-TICK を引き継ぐビートロック。もちろん前作 「TABOO」 の経験も生かされ、ツインギターの編成を効果的に生かしたアンサンブルは緻密さを増し、クオリティは着実に上がっています。複雑な変拍子がスピード感を殺さないまま組み込まれた 「NATIONAL MEDIA BOYS」 、心地良い疾走感の中に恍惚が滲み出る 「LOVE ME」 、文字通りサバトな背徳の世界を展開する 「SABBAT」 、初期の代表曲その2 「悪の華」 など10曲。うーむ、全体的にはソツなくまとまってはいるのだけど、曲調や音作りの多彩さといった点では 「TABOO」 の方が上だし、事件の後というのも影響してか少々足踏みしてしまってる印象。ちなみにこちら全曲に PV が作られておるのですが、特に 「LOVE ME」 は曲調に反して極彩色の悪夢とでも言うべき強烈さ。音楽性はともかく、ヴィジュアルや歌詞世界における美意識はだんだん毒を深めているところですね。


Rating: 6.8/10


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