BUCK-TICK 「極東 I LOVE YOU」 「Mona Lisa OVERDRIVE」 「at the night side」 「十三階は月光」


B-T 祭りの最終日。2000年代に入ってからの4枚です。これ以降は感想アップ済み。



極東I LOVE YOU

極東I LOVE YOU

1年半ぶりとなる12作目。


前作が2000年で今作が2002年。その間に何があったか。そう 9.11 です。あの歴史的かつ凄惨な事件に影響されたアーティストは数多くいますが、 B-T もそのひとつ。 「極東より愛を込めて」 では 「汝の敵を愛することが君にできるか」 と問い、 「Long Distance Call」 では 「愛してるよ Mama」 と戦場に向かう兵士の最後の言葉を綴るようで、 「Brilliant」 は死者への餞のようにも受け取れる。しかしそういった表現の根幹にあるのは怒りや憎しみではなく、愛と祝福。ただ能天気に戦争反対を叫ぶのではなく、闇より深い闇を通過したからこそ生まれる表現力、説得力をもって、守るべき人を守り、愛し合い、力強く生きるべきだと歌う。あくまで 「I LOVE YOU」 なのだと。だからこそオープナー 「疾風のブレードランナー」 〜 「21st Cherry Boy」 の鮮烈さも軽薄にならず響いてくる。全体的に洗練された聴きやすい音像なのも、その音の広がりに影響してるかもしれない。おそらく B-T のカタログ中最も 「優しさ」 に満ちたアルバム。


Rating: 8.2/10



Mona Lisa OVERDRIVE

Mona Lisa OVERDRIVE

前作から1年経たずに完成した13作目。


暴走。作曲のみならず作詞、ヴォーカルにおいても今井ちゃん率の異様な高さ、それだけでも今作の暴走っぷりを物語ってると言えるでしょう。前作が 9.11 を受けて愛と希望を願った作品だったのに、その反動が思い切り揺り戻ってしまい、肉欲/破壊/皮肉/憎悪が迸る劇薬な内容と化しています。初っ端からファックファック連発の危険ナンバー 「ナカユビ」 、リリックで遊びつつアグレッシブなレイブサウンドが身体を突き上げる 「LIMBO」 、シドと言いつつミチロウ先輩に敬意を表した 「Sid Vicious ON THE BEACH」 、そしてスパートかけて本能/衝動を一層剥き出しにする 「原罪」 「MONSTER」 「愛ノ歌」 。アグレッシブに勢いづいた作風ではあるんだけども、以前と違うのはやはりその勢いが死や苦悩、破滅ばかりではなく、リビドーに端を発する生への欲動がキモにあるところでしょうか。なのでサウンドに熱があり、生々しく、肉感的。前作とノイズ SE で連結されつつも綺麗に対を成すドロドロの悲喜交々。


Rating: 8.0/10



at the night side

at the night side

約3年ぶりとなる3作目ライブ盤。


今回は 「Mona Lisa OVERDRIVE」 関連ツアーよりベストテイクを選出。元々アグレッシブな曲が多かっただけにライブでもその勢いはそのまま引き継がれています。 「ナカユビ」 「残骸」 「MONSTER」 などは間違いなくライブ向けだし、意外にもようやくライブ盤収録となった 「ICONOCLASM」 はカオスっぷりに拍車がかかってランナーズハイの領域。彼らが掲げる 「生と死」 の表現はライブだとより肉感的、刹那的になって説得力を増す。序盤の 「ヒロイン」 も以前の 「SSL」 の時とは違ってひどくパワフルに感じる。ただ今回全体から受ける印象は 「ONE LIFE, ONE DEATH CUT UP」 とそう変わらないかな…。このツアーだと 「限りなく鼠」 「無知の涙」 といったレア曲、また 「極東より愛を込めて」 なんかもハイライトとしてセットリストに組み込まれていたはずなので、それらも収録してほしかった。しかしデジ要素の強い曲でも単なる再現に留まらず、ライブらしい熱量を加えて収められるというのは彼らの実力あってこそですね。


Rating: 7.4/10



十三階は月光(初回)

十三階は月光(初回)

各メンバーのソロ活動を挟み、2年ぶりとなる14作目。


初めて B-T が道化に徹したアルバム。これまでにもヴィジュアル面にゴシック/デカダンなモチーフを用いることは多々ありましたが、音楽的にもここまでゴスを貫いたことはかつてなかった。全体を重苦しい緊張感が支配し、ピアノ/ストリングスの音色も随所に配したクラシカルなアレンジ。特に序盤の重厚に迫るミドル曲連発パートは、強固に統一されたアルバムの世界観を明確に提示する凄みに満ちています。中盤に入ると洒脱なブギ調の 「Goblin」 、アーバンな疾走感が B-T としては王道なのに今作中では異色な 「ALIVE」 、あとは唯一息をつける軽やかなポップ曲 「ROMANCE」 などもありますが、それ以外は余計な実験や他ジャンルとの融合を極力排し、純正のゴシックを目指した漆黒の音世界。しかしこの路線に従来の B-T らしさが出てるかと言うと、どうも首肯しかねます。ゴスを徹底させるために自らの個性までも犠牲にしたような、少々コンセプトに囚われ過ぎたきらいがある。アルバム丸ごと飛び道具と化した、今までとは全く別の類の問題作。


Rating: 6.2/10



これで大まかなカタログはさらえたってところで最新情報入りましたー。新レーベル作るんですってね。25周年を機にさらに前へと進もうとする頼もしさ全開の御大なのでした。これからもついていきます。