チャットモンチー「Awa Come」「YOU MORE」「変身」

Awa Come (Forever Edition)

Awa Come (Forever Edition)

2010年発表のミニアルバム2作目。


この作品については久々に聴いても、リリース時に書いた感想(こちら)からさほど大きくは変わりませんね。なにせアルバム表題が阿波カムなだけに、今作のキーとなるのはややはり「青春の一番札所」。阿波踊り眉山、鳴門、かずら橋、吉野川、そしてすだち酒…あとは鳴門金時とかうだつの町並みとかあるけど、まあ全部は無理よね。徳島県民にとっての青春の一ページ、ならぬ一番札所を切り取った郷愁を誘うモチーフの数々。最近でもアスティとくしまで主催フェスを敢行するなど彼女たちの地元レペゼン精神は今もなお続いているわけですが、同じ徳島出身の自分には何だか遠い理想のように映ります。だって地元民からしたら徳島マジで何もないし、憧れのミュージシャンをほとんど雑誌やテレビでしか見れなかった鬱屈が募り募って、高校卒業と同時に自分は徳島を捨てたようなものですから。しかしそれでも徳島出身であるチャットのメジャーデビュー時には無条件に期待したし、彼女らが徳島関連の企画を立てるたびに微笑ましい気持ちになる。他の県でここまで地元愛を打ち出してる例って他にあったっけ?やはり誇らしいバンドだ。

Rating: 7.0/10



チャットモンチー 『「ここだけの話」Music Video』




YOU MORE (Forever Edition)

YOU MORE (Forever Edition)

2011年発表のフルレンス4作目。


ユーモア。例えば力の入った疾走チューンであったり、あるいは心へ切々と訴えかけるバラード、そういったシリアスな向きの楽曲ではなく、あっけらかんとした中に一つまみのアイディアを効かせたポップソング。昔の感想でも書きましたが(こちら)今まで以上にフラットな状態で肩の力の抜けた内容。初期の瑞々しさや負けん気よりも朗らかで緩いムードの方が前に出ていて、この緩さというのがファンの間でも賛否両論を起こしていただろうし、自分としては新しいチャットモンチー像を提示する方向性としては弱いのでは…という否サイドの印象でした。ただこのアルバム発表後にくみこん脱退という事件が起こっているわけで、その事実を踏まえて聴き返すと「草原に立つ二本の木のように」や「桜前線」なんかは当時とは少し意味合いが違って聴こえる気がする。またアルバム全体としてもユーモアを謳いながら、裏側にはバンドの基盤が揺らぐ中での苦渋が少なからずあったのかもしれません。「つかみたい花を見つけてしまった/あぜ道を一人で行きたい」。けれどずっと歩いていれば、きっとまた何処かですれ違うはず。

Rating: 6.0/10



チャットモンチー 『「バースデーケーキの上を歩いて帰った」Music Video』




変身 (Forever Edition)

変身 (Forever Edition)

2012年発表のフルレンス5作目。


くみこん脱退後は後任を迎えることなく大胆なパートチェンジを決行。サンプラーを駆使してギターを重ねたり、シンセを弾きながらドラムを叩くなど「ふたりだけで何処まで出来るか」の可能性にチャレンジするという、一般的に見ても非常にユニークなバンド編成となり、逆境の中で革新的な一歩を踏み出した内容となっています。アンサンブルの薄さはまるで気にならないと言えば嘘になるけども、その辺は巧みなアイディアやキャッチーなメロディでカヴァーという感じで、メンバーは減ったのに自由度はむしろ高まったデュオ編成ならではの楽曲群。そういった柔軟性がありつつ、個人的にこの作品に強く惹かれたのは全体にある切迫感、何としてでもバンドを継続するという真摯さが強く感じられるからだと思います。新編成で再スタートを切るというところでの力が迸っていて、それが彼女たちなりの等身大の表現というリアリティに繋がってる。結果的にこのデュオ編成は今作のみとなっていますが、ここで見せた挑戦心はその後の彼女らにとっても大きな糧となったはず。過去最高にタフな輝きに満ちた、ひとつの希望のような作品。

Rating: 9.0/10



チャットモンチー 『「満月に吠えろ」Music Video』