Myrkur 「Folkesange」

Folkesange

Folkesange

  • アーティスト:Myrkur
  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: CD
デンマーク出身、 Amalie Bruun によるソロユニットの2年半ぶり3作目。


アルバム表題は「民謡」。それでこのジャケット。最初は Helmet「Betty」のような悪ふざけだろうかと思っていたら、まさかの大真面目でした。これまでのブラックメタル要素をすっかりかなぐり捨て、アコースティック楽器を基調とした北欧フォークへと変貌。空間的に広がる多重コーラスが荘厳な聖性を醸し出す、その空気感からの重さというのは感じますが、物理的なヘヴィネスやアグレッションなどはもはや皆無で、一体彼女に何があったのかと流石に面食らう。ただこれまでの彼女のキャリアをよくよく振り返ってみると、10年ほど前に本名名義でデビューした時はフォーク要素を加味した R&B ポップをやっていたり、その後に結成したバンド Ex Cops ではドリームポップとオルタナティブロックを掛け合わせてさらにカラフルな路線に走ったり、それらを経た後に始めたのがお一人様ブラックメタル Myrkur という具合で、一定の場所に留まる様子がまるで見られないのですね。その時その時の心情に合った表現を志す、絶えず変化していくことこそが彼女の本質なのかなと考えれば、なるほど今作もまた、彼女の多面的な魅力を構成する重要な一部なのだろうと。

Rating: 7.0/10



MYRKUR - Leaves of Yggdrasil (Official Music Video)

5lack 「この景色も越へて」

この景色も越へて

この景色も越へて

  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: MP3 ダウンロード
東京都板橋区出身のラッパーによる、1年4ヶ月ぶり7作目。


前作「KESHIKI」の続編に当たる作品とのことですが、具体的なストーリーの前後編というわけでもなさそう。というのもその「KESHIKI」が、2018年時点での 5lack が持つ日常的な目線、あるいはラッパーとして活動する中で湧き出る思想、そういった彼個人の内面をリアルに投影した歌詞が多かったので、その前作を経た上で今現在に感じていることをこの作品で綴った、ということかなと思います。過去の自分と現在の自分は点と点ではなく、常にひとつの線で結ばれているのだと。それで今作。前半には「Grind the Brain」「道端にて」など、ジャケットの牧歌的な雰囲気を裏切るようなキナ臭い楽曲が並んでいますが、哀愁漂うアコギの音色が印象的な「ヒーローは日曜日に眠る」からは一気にメロウモードに突入。ラップではなく物悲し気にメロディをなぞる場面がかなり多く、前作でも見られたフォーク、ブルースばりの湿り気が改めて強調されています。特にクローザー「透明少女」ではもはや桑田佳祐か?と見紛うほどに濡れそぼった情感が溢れ出し、思わずこちらも一杯やりながら遠い目をしてしまう。飄々としているようで後味はごってりエモーショナル。

Rating: 7.3/10



Grind the Brain / 5lack