David Bowie「Blackstar」

Blackstar

Blackstar

約3年ぶりとなる通算25作目。


おそらく多くの人に存在すると思うんですが、音楽史的に重要なレジェンドであるにも拘らず、実際に聴いてみても資料的価値以上の良さを見出せないというアーティストが。自分にとってはボウイってその最たるものの一人だったんですよね。単純に好みの違いと言えばそれまでなんですが、今まで彼の音楽の魅力、その取っ掛かりをずっと掴めずにいた。しかし数度目のチャレンジとなる今回のボウイ、今までとは随分と様相が異なります。かなり力の入った王道路線だった前作「The Next Day」から一転し、全編にジャズを導入した今作。しかしアーバンでリラクシンな空気感ではなく、エレクトロニックなニュアンスも強く表れたそのサウンドには「Kid A」以降の Radiohead 、あるいは Scott Walker を彷彿とさせる不穏なダークネスが棚引いています。10分にも及ぶ表題曲「Blackstar」で深遠な音世界が幕を開け、「'Tis a Pity She Was a Whore」のキナ臭く野蛮なスリルや「Dollar Days」の哀愁と陶酔を経て、終曲「I Can't Give Everything Away」のカタルシスへと向かう構成は、さながら一本の映画のような美しさ。最後の最後に彼は弱輩の自分をも魅了してくれました。

Rating: 8.8/10



David Bowie - Lazarus