さユり「ミカヅキの航海」

福岡出身のシンガーソングライターによる初フルレンス。


1曲目「ミカヅキ」の冒頭、その声に耳をガッと掴まれたような心地になりました。敢えて言うなら LiSA と椎名林檎の中間に位置するような上擦った声質で、曲を聴けばそこにの子や橋本絵莉子も同時に透けて見える気がする。しかし彼女自身はそのいずれからも影響を受けていないかもしれない。ともかく独特な響きの、何やら魔的な魅力を持った声だと。曲自体は至ってオーソドックスな作りの J-POP 。ただ一貫してマイナー調の憂鬱さや不安が纏わりつき、疾走するリズムは焦燥感をひどく掻き立てるもの。それは彼女の声やメッセージを引き立たせるには一番の好手でしょう。ある意味10代ならではと言える等身大のエモーションに満ちた、叫びにも似た歌の数々。「蜂と見世物」「knot」などで見せるキレの良い躍動感には自然と惹き込まれるし、ミドルテンポで聴かせる「十億年」「birthday song」では情念的な迫力すら感じる。ただベトベトになりすぎず取っつきやすい軽さが常に存在していたり、ロキノンにもアニソンにも対応できるキャッチーな作りを取ってみても、非常に現代的な匂いがするというか、ここが2017年におけるポップスの先端のひとつなのだなと。

Rating: 7.6/10



“酸欠少女”さユり 1stアルバム「ミカヅキの航海」収録曲『birthday song』酸欠少女の存在証明物語のMV