Vince Staples 「Big Fish Theory」
- アーティスト: VINCE STAPLES
- 出版社/メーカー: DEF JAM RECORDINGS
- 発売日: 2017/06/23
- メディア: CD
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何とも冷めきった音であることよ。元々はギャングスタ文化の中に身を置いていたとのことですが、彼自身は決してマッチョなアウトロー感を打ち出してはいません。かと言ってポップに振り切れてもいない。常に低熱な姿勢をとりながら、あらゆる事象に対して懐疑的、批判的であり、ともすればニヒリスティックな印象すら受ける。トラックは緩急をつけながらも一貫してシンプルな質感。しかしそのぶん一つ一つの音がシャープに研ぎ澄まされ、低く唸るベースラインはやたらと切迫したダークな雰囲気を醸し出しています。「Love Can Be…」では愛情すら不確かなものだと嘆き、「Yeah Right」ではいかにも様式的な自己賛美で大風呂敷を広げる他ラッパーを問い質し、「Party People」では自らの内に潜む死の匂いを掻き消すようにしてフロアの狂騒を追い求める。そういった逡巡や疑念を繰り返しながら、トラップ/グライム/ハウスなどを渡り歩く多彩なエレクトロビートの上で、緩やかに、それでいて刺すように言葉を紡いでいく。オリジナリティを目指したが故の辛辣さが滲み出た、実際の音圧以上にひどくヘヴィな音。ゲストの配置も実に冴えてる。
Rating: 8.0/10