FUJI ROCK FESTIVAL '17 2日目

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昨日に続いて2日目です。雨はこの日が一番キツかったです。パーカー着こんでて正解だった。


サンボマスター @ GREEN STAGE

見るのは多分5年ぶりくらいになるサンボ。フジロック常連のイメージがありましたが彼らの出演は実に10年ぶりとのことで、そう言えば前の時もグリーンのトップバッターでしたね。この曲は ROOKIE A GO-GO でも演ったんだぞ!と「そのぬくもりに用がある」からスタート。正直この時点でだいぶ胸の内に込み上げるものがあったんですが、その後に山口隆は MC でしきりに「10年」という言葉を口にしていました。10年前より凄いもの見せてくれと、10年間ご苦労様でしたと、そして、10年後も死なねえで生きてくれと。いつもの東北訛りのしゃがれた早口で、少し言葉を詰まらせながら、俺はもう悲しいことはたくさんなんだと。もう俺ボロッボロ泣いちゃってね。まともにステージ見れなかった。彼らの事を名前しか知らないという人にも、代表曲満載のセットリストでその気迫は届いたことでしょう。彼らが暑苦しく前向きなメッセージを発するのは能天気な上っ面などではなく、その裏側にある苦しみや悲しみを重々知っているから。見終わった後にはすっかり頭が真っ白になっていたのでした。


PUNPEE @ WHITE STAGE

かつてはドラゴンドラの向こうで PSG として出演していた PUNPEE 。今年は観客大入りのホワイトです。レインコートを靡かせながら登場し、さらりと自己紹介した後にいきなりの「お嫁においで 2015」。昨日グリーンに出演してた加山雄三はもう帰ってしまったらしいけど(笑)、フロアはさっそく大合唱でほのぼのとした空気に。その後には不意を突くように Linkin Park「Numb」が流され、PUNPEE が巧みにビートジャック。彼もまたリンキン世代ということでロックヒーローに追悼の意を表明し、その後も BeckレッチリOasis の楽曲を立て続けに流しては軽妙にラップ。テキトーだのダメ兄貴だのと飄々と自称しておいて、その実何ともスキルフルでウィットに富んだ男よ。でも自分が特に興奮したのはそうしたロックファンへのアピールの後。STUTS とのコラボレーションで生まれた名曲「夜を使いはたして」、自身の楽曲「Bad Habit」と Seiho「I Feel Rave」のマッシュアップ、そして 5lack と GAPPER をゲスト招聘しての PSG 「愛してます」と、アンセムの畳みかけで思わず胸が一杯になってしまった。持ち得る手札をフル活用してのヒップホップ・エンターテインメント。我々は十分に昼を使いはたしました。


Cocco @ GREEN STAGE

いつぞやの COUNTDOWN JAPAN 以来、10年以上ぶりかもしれない Cocco 。バックバンドは何故か全員ピンクの法被という間の抜けた衣装でしたが、ご本人は白のドレスに花束を持って登場。ドレスから伸びる痩せた腕、そして時折覗く背中のタトゥーが何だか妖艶な雰囲気。セット前半はいきなりの「けもの道」を皮切りに、往年の代表曲を立て続けに披露。アンサンブルが一丸となった手練れのグランジサウンドに乗せ、身体を大きく折り曲げて髪を振り乱し、ヒステリックな絶叫を上げる。自分はもちろん Cocco が何物であるかは分かったつもりではいましたが、やはり生で直面するとその迫力に怖れの感情が沸き上がってきました。そういった鬼気迫るダークネスがあるからこそ、後半での「ジュゴンの見える丘」「有終の美」といった楽曲も一際美しさが際立つ。ほとんど MC はなく、曲に入る前には空をキッと見つめ、曲の世界観へとダイブする準備をするように体制を整えていた。彼女が現在においても全霊を擦り減らしながら歌う生粋の表現者であることが痛烈に伝わってきました。


CORNELIUS @ GREEN STAGE

今年のフジの最大のトピックとしては小山田圭吾小沢健二が同じ日に出演するということで、この2日目が完全ソールドアウトしたのは彼らの影響が最も大きかったのではと思います。しかしながらフリッパーズ・ギターの再演という聴衆の甘い期待には全く構うことなく、彼らはそれぞれに独自のスタイルを貫き通していたのでした。その片方。

定刻になるとステージに大きく張られた白い紗幕に映し出される Mellow Waves の文字。紗幕が落ちると白い衣装で身を固めたメンバー、そして演奏と完璧にシンクロする映像。かつての THE CORNELIUS GROUP の時にも思ったけど、インスタレーションとしての精度の高さにただただ唸らされるばかり。スタジアム級の野外にも拘らずひとつひとつの音の細部が実感できるほど音響が良く、それがシュールでユーモラス、なおかつインテリジェントな映像と綺麗に合致。スクリーンの演出を使うアクトは他にも沢山いますが、視覚と聴覚の総合演出という点で彼ほどの緻密な拘りを見せた人は他にいないでしょう。冒頭「いつか/どこか」はライブだと爆発力が何倍にも増幅され、美しくミステリアスな「Point of View Point」からのハードコアチューン「Count Five or Six」「I Hate Hate」連打、「Beep It」「Fit Song」でのユニークな遊び心、そしてクライマックス「Star Fruits Surf Rider」から「あなたがいるなら」へと流れる時の美しさには完全に脱帽でした。「Fantasma」以降のベスト的な選曲でありながら、歌モノへと回帰した新譜の曲で更なる発展の可能性も覗かせるという、過去から未来への時間軸が繋げられたドラマチックな流れ。コーネリアスの表現の神髄を堪能できました。


APHEX TWIN @ GREEN STAGE

いつぞやのサマソニぶりにご対面となる Richard D. James 御大。後でネットで確認して度肝を抜かれたのですが、ちゃんとしたセットリストがあったんですねアレ。というのも実際に現場で鳴っていた音は、一応規則的なビートが鳴ってはいるものの、それがどんな風に転ぶか全く予測がつかず、曲の切れ目すら定かではない、まるっきりフリーキーな混沌の様相を呈していたからです。

ほとんど逆光になった御大の姿はまるで確認できず、スクリーンには最前列の客に James スマイルを被せたリアルタイム悪質コラージュ、魔改造済みのドラえもんやらアンパンマンやらのブレイクダンス、そして最新の James アー写よろしく奇形に加工されたフジの共演者、そして日本の芸能タレントの方々。さすがに松居一代や野々村元議員がネタにされてるのには笑った。いったい誰が吹き込んだんだ。カオティックな映像にカオティックな音、そしてカオティックな雨。途切れなく縦横無尽に襲い掛かる爆音の中で、もはや何が何やらわけわからんという感じでヤケクソで踊っていたらいつの間にか90分が過ぎていました。これは果たして何処まで計算ずくだったのか、正直その場その場で適当に弄り倒してるだけのような気がしなくもないけれど、ともかく先のコーネリアスとはまるっきり真逆な、IDM の破壊的な極致でした。これがメインステージの大トリというのも無茶苦茶な話だ。


2日目はこれで終了です。ベストアクトはやっぱり迷うけれど Cornelius で。