For Tracy Hyde 「he(r)art」

ハート

2012年結成の5人組による、1年ぶり2作目。

17曲という結構な大ボリュームが収められた今作。中には「TOKYO WILL FIND YOU」と冠せられた楽曲もあり、この作品で彼らが描く情景は東京のとある一断片をイメージしたものかと推測されます。その意味では今作はシティポップの範疇と言えるかもしれませんが、昨今の国内インディの流行とは趣を異としていることが、一聴すればすぐに感じられると思います。ギターやシンセには常に濃いめのエコー／リバーブ処理が施され、すっかり輪郭の蕩けきったサウンドは極端なまでにドリーミー。そこにはもちろんシューゲイザーの影響が多分にあるだろうし、あるいは80年代エレクトロポップにも似たノスタルジックな意匠。「Floor」ではファンキーな躍動が、「Leica Daydream」では春風のような疾走感が、「Just for a Night」では夜明けの岸辺に佇む時の郷愁が空間一杯に充満する。個人的には中心の女性ヴォーカルが、前作の時にも感じたように少々無表情すぎる気がするのですが、ここまで質量ともに振り切れて夢見心地だとなんだか力技で押し切られたような、もはや降参せざるを得ないという気持ちになる。まるで執念にも似た美しさへの特化。

Rating: 7.7/10

For Tracy Hyde - Floor (Official MV)