DEZERT 「TODAY」

「TODAY」

「TODAY」

2011年結成の4人組による、約2年半ぶり3作目。


バンドの中心人物であるヴォーカル千秋のインタビューを読めば、前作からの間に彼の中で大きな変化があったことが痛々しいほどに伝わります。ギミックに頼らず、井の中の蛙とならず、より広い世界に向けて表現を発信するべきだという、意外なくらい真っ当な意識変革。その変化は今作に顕著に反映されています。これまでにあったグロテスクな描写やデスヴォイスの類はすっかり排除。一層ポップに向かったメロディに言葉の一節一節を丁寧に置き、現実とアイデンティティの狭間で激しい葛藤を続けながら、それでも世界と対峙して前に歩を進めようとする様子がどの曲においてもリアルに綴られています。千秋の内面に沸き起こる感情、ごく私的な決意表明を11曲44分に渡ってこれでもかと叩き付け、その私的であるが故の鋭さ、切迫感がリスナーにダイレクトに突き刺さってくる。ただ楽曲自体はエモ/オルタナティブメタルからの影響を主としながら、良くも悪くも以前の引っ掻き回すような暴力性は後退し、随分と綺麗に整理整頓された印象を受けます。その辺も伝わりやすさに重きを置いた結論かとは思いますが、個人的には若干寂しさも残る。

Rating: 6.8/10



2018.08.08発売「TODAY」全曲試聴