菅野よう子 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society O.S.T.」 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX be Human」

攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society O.S.T.

攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society O.S.T.

2006年放送のアニメ「攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society」のサントラ集。


ここでは前作「O.S.T.3」以上に余分な贅肉や寄り道が除かれて、テクノ/ドラムンベースの硬質かつ無機質な感触と厳かなストリングスを融合した、緊密に整合性のとられた音世界が展開されています。ディストーションギターや生ドラムの使い方もロックというよりインダストリアルに近いもので、シンセ類のソリッドかつ冷ややかな質感を一際強調するような組み合わせ。ただ遊び心が減ったことで面白味が削がれているかというわけでは決してなく、むしろ各曲がさらに濃密に練り込まれた聴き応えのあるものとなっています。今作中最もヘヴィなグルーヴが直接的に刺さる「zero signal」、ほとんど Evanescence なゴス・ニューメタル風の「date of rebirth」、仄かに R&B ポップのしなやかさを感じる「from the roof top - somewhere in the silence (sniper's theme)」と、絶妙に硬軟のメリハリをつけた流れには確かな筋が通っており、ヴォーカル曲も変にリード曲然とならず他のインスト曲と綺麗に同列に並んでいます。優美かつ壮大な「Remedium」で締めるラストも映画さながらの演出だし、これはこれで充実の内容。

Rating: 7.9/10


「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX be Human」

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX be Human」

「S.A.C.」のタチコマ登場シーンで使われた曲を中心とする企画盤。


攻殻シリーズきってのゆるキャラであるところのタチコマをフィーチャーした番外編ということで、そんなに身構えずに聴いたら予想よりもずっときっちり作り込んでて逆に笑った。もちろん他のサントラよりも肩の力の抜けた所はあり、「タチコマの家出」「お散歩タチコマ」のようなほのぼのした遊びの楽曲はまさにスピンオフならではという感じ。その他にも「FAX me」「let's oil」など1~2分程度の小品が多く、タチコマの立ち振る舞いを想像しながら聴くとただただ和むばかり。しかしながらタチコマが単なるおとぼけ担当というわけではないのですね。表題曲「be human」ではまるで童話のようにタチコマのいじらしい夢が綴られたり、「trip city」の緊迫感、「ロッキーはどこ?」の哀愁などもタチコマという存在を描く上で大事な要素。そもそも攻殻機動隊には電脳化/義体化を受けながらも極めて人間味に溢れた個性豊かなキャラクターが多く、その中でタチコマがいかに重要な立ち位置かというのが今作を聴くだけでも伝わるのではないかなと。実は多面的な魅力を描いた丁寧な仕事。

Rating: 6.9/10