Kuro 「JUST SAYING HI」

JUST SAYING HI

JUST SAYING HI

TAMTAM のヴォーカリストによる初のソロアルバム。


バンド本隊ではレゲエ/ダブを基調としつつ、そこにエレクトロニカやポストロックなど様々な要素を加味していくという音楽性だったのが、このソロ作では一気に洗練された R&B ポップへとシフト。こうしてクールに引き締まった音像の中で彼女の歌を聴いていると、改めてそのヴォーカリストとしての力量に唸らされます。これまでの TAMTAM の作品においては、彼女は幅広い曲調をよりカラフルに引き立たせる表情の多彩さ、繊細さが特に印象的でした。今作ではトラックの冷たい感触、アンビエント的とも言える心地良い浮遊感に合わせてか、バンドの楽曲に比べるとヴォーカルの抑揚はいくらか控えめかもしれない。ただそれでも、澱みなく流れるフロウのしなやかさや、透明度の高い声質で見せる僅かな震え、そこには確かに感情の機微が封じられており、むしろ今回のようなスタイリッシュな曲調の中では、その細かな部分の魅力が一層浮き彫りになっているように思います。中でも特に挑戦的な姿勢なのは君島大空プロデュースの「虹彩」。自身の声を立体音響の一部と捉えた構成で、文字の情報量は最も少ないにもかかわらず、今作中最もエモーショナルな響き。

Rating: 7.7/10



Kuro - PORTLAND (Prod. EVISBEATS)