Awich 「孔雀」

孔雀

孔雀

  • アーティスト:Awich
  • 出版社/メーカー: YENTOWN / bpm tokyo
  • 発売日: 2020/01/11
  • メディア: CD
沖縄出身のシンガー/ラッパーによる、2年半ぶり3作目。


前作「8」では彼女の持つ多様な表情、例えばいかにもラッパーらしい挑発的な攻めのスタイル、または夫の死別という果てのない悲しみや、残された我が子に対する慈愛、そういった喜怒哀楽の各々を洗練されたサウンドによって均一の質感に仕立て、冷たくも柔らかなムードを通底させることでスムースな流れを構築しているように見えました。それと比較すると、今作での彼女は内なる起伏をより一層ダイレクトな形で伝えようとしています。ハートウォーミングな「Love Me Up」で始まったかと思えば、次曲「洗脳」を皮切りに立て続けで繰り出される喧嘩腰ラップの数々。何だか鋭い爪で引っ掻き傷をつけられている心地がして思わず仰け反る。しかし EGO-WRAPPIN'「色彩のブルース」をサンプリングした「紙飛行機」からは一転し、しなやかな美しさのメロディに乗せて心の弱さ、優しさが露わとなっています。前半に緊張、後半に開放が振り分けられたダイナミックなアルバム構成はまるで一本の壮大な映画を見ているようで、20曲60分のボリュームを無理なくグイグイと聴かせてくれる。この力強さ、鮮やかさこそが孔雀のイメージと合致する、ということか。

Rating: 8.0/10



Awich - Open It Up (Prod. Baauer)