L'Arc~en~Ciel ARENA TOUR MMXX @ 大阪城ホール 4日目

f:id:sikeimusic:20200112194421j:plain

何と言うか、とても生真面目な、誠実なライブだったと思います。




個人的なブログなので個人的なことを申し上げますと、自分はライブに行くとなれば会場は専らライブハウスでして、ドームやアリーナクラスの規模の会場に行くことがほとんどないのですね(フェスは別として)。なのでそういったデカ箱ライブにつきもののビッグバジェットな演出にはいちいち子供みたいに驚かされているのですが、今回のライブでは本当にすっかり童心に返らされたと言うか、ほとんどアミューズメントパークのミュージカルショウを見ているような心地になっていました。もちろん過去のライブ映像においてもそういう趣向は数多く見られていましたが、実際に体感してみるとやはり、自分の想像以上にラルクというプロジェクトのスケールのデカさが桁違いで、通常のライブを楽しむようなノリには全然なりませんでした。むしろパレードの方が感覚的には近かった。煌びやかな視覚面の情報量で圧倒されるような。


例えば自分は先月 LUNA SEAさいたまスーパーアリーナ公演を見に行ってまして、その時も映像やら特効やらの演出がてんこ盛りの内容だったんですけども、LUNA SEA の場合はそれでもまだライブハウスと地続きのノリ、ロックバンドとしてのスタイルをあくまでも固持していました。しかしラルクの場合はもはやそのスタイルすらをも解体してしまっている節がある。今回であればセンターに配置されたステージ、それを360度取り囲むスクリーン、そこにパイロもテープも風船も惜しみなく導入。その全てがとにかくエンターテインメント性に特化したサーカスのごとき様相で、楽曲の世界観やメッセージ云々よりもショウとしての享楽性がまず第一に来る。彼らが残してきた楽曲はジャンルの枠組みを超え、すでに J-POP におけるスタンダードのひとつとして認知されているものかと思いますが、その "スタンダードで在るべし" という姿勢がライブの作り、メンバーの立ち振る舞いにもそのまま反映されたかのよう。とにかく受け皿が広い。もはやロックバンドの枠組みは彼らにとってはさして重要ではないし、ましてやヴィジュアル系の形容など何ら用を成さない、これこそ本当の意味でお茶の間進出を果たした "国民的" グループの姿だよなあと、今更にも程がありますが深く感心してしまいました。


さらに言えば今回のセットリストは、そういったエンターテインメントに徹しようとする彼らの姿勢を特に強調していたように思います。初っ端からいきなりの「HONEY」で始まり、基本的には初心者向けと言えるヒットシングルのオンパレード、それも「Driver's High」や「READY STEADY GO」のような快活でパワフルな路線がずっと幅を利かせている内容。およそ20年ぶりの演奏となるレア曲の選択にしても「Round and Round」や「風にきえないで」だったりで、全編通してとにかくオープンな印象が強い。また「REVELATION」ではメンバー全員がギターを構えて四方に伸びた花道を練り歩くという演出。最も激しいタイプの曲であるにも拘らず、そこでライブハウスのノリに向かうどころか通常のバンド編成をすっかり解体してしまう、このパターンは過去のライブでも近しいものはあったけれど、その大胆さには改めて度肝を抜かれる。こうしたド派手なパフォーマンスの数々と、ドーム規模の演出を凝縮してアリーナサイズにまとめたようなステージセットも相まって、1万人以上を収容しているはずの城ホールがえらく小さくなったように思われたし、メンバーも物理的な距離以上にずっと近く感じられました。


そんなライブの中で浮かび上がっていたのは、メンバーがラルクをきっちり全うしようとするある種の誠実さでした。中でも特に hydeyukihiro は、現在メインで行っているソロ活動が極めて個人的な趣味性の高いものなだけに、ラルクの楽曲とはかなりのギャップが生まれてしまっています。hyde に至ってはそれで本格的に海外ツアーまで敢行しているんだから、バンドとソロ、メインとサブが完全に逆転している状態。しかしそれでも、hyde はソロ活動での経験をバンド本隊へ還元したいといった旨の発言をしていたし、年に一度ほどしかバンドを動かすことが出来ない状況と化した現在においても、彼らはきちんとラルクの姿を保ち続け、誰一人置いてけぼりを食わせないようなパフォーマンスに腐心していた。360度全員残らず楽しませてやる、という MC は決して単なる常套句ではなく、彼らなりの意志が確かに宿った言葉なのだと思います。


それにしても短かった。いやトータル20曲演奏してるから決して短くはないのですが、後から振り返るとあれもこれもやってないというのがボロボロ出てくるし、終わってみれば随分とあっさりしていたような、食い足りない気持ちがすぐさま湧き上がってくる。ラルクを初めて知ったのが20年ほど前。その間とことん機会を逃し続けてきた。そんな20年ほどのツケはそう簡単に払えるものではないのでした。


セットリスト:
1. HONEY
2. Round and Round
3. Lies and Truth
4. Pretty girl
5. Vivid Colors
6. LOVE FLIES
7. 瞳の住人
8. X X X
9. DRINK IT DOWN
10. Shout at the Devil
11. REVELATION
12. SEVENTH HEAVEN
13. Driver's High
14. STAY AWAY
15. READY STEADY GO
(アンコール)
16. ガラス玉
17. TIME SLIP
18. 風にきえないで
19. I'm so happy
20. ALL YEAR AROUND FALLING IN LOVE