ぱぱぼっくす 「僕のものになれ」

僕のものになれ

僕のものになれ

大阪出身の3人組による4年ぶりの新作。初めて聴きました。


昭和ノスタルジックなメロディを歌のお姉さん風ヴォーカルが伸び伸び歌う、アコギ基調のフォークポップ。実に簡素なアレンジでベースレスの曲も多く、ただ歌を素朴に聴かせることに専念したオーソドックスな作り。そのなだらかに起伏するメロディ/ハーモニーは練り込みを感じさせつつさらっと聴ける感じで心地良いのですが、歌詞世界は決して心地良いだけではなく、繊細に揺れ動く感情の機微が上手く表現されています。 「ちょっとだけ情熱」 では 「前を向けない僕を笑って/だけど、許さないで」 と倒錯気味にアイデンティティを問い、 「恋花火」 では 「ふるえてるわけを教えて」 と密やかで艶かしい恋を描き、 「最後の電話」 では 「ちぎれた心は つなぐ必要はない」 と修復不能な関係を歌う。そしてタイトルは 「僕のものになれ」 。思春期まっしぐら、というかね。思春期というものを美化して上っ面だけの甘酸っぱさで覆っても意味がない、矛盾や苦悩、エゴに満ちた業の深いものだということを踏まえ、それをあくまで優しく牧歌的に、日常的な目線で歌うという。そういう意味で非常にリアルさを感じさせる青春ポップス。沁みました。


Rating: 7.8/10
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