BOOM BOOM SATELLITES 「Joyride」 「OUT LOUD」 「UMBRA」

19972007(初回生産限定盤)(DVD付)

19972007(初回生産限定盤)(DVD付)

10周年記念ということで先日初のベスト盤をリリースしたブンサテ。彼らももう10年選手なのですね。比較的マイペースではあるものの常にそのクリエイティヴィティを落とさず、作品を出す毎に新しい方向性を提示し、己のスタンスを貫き続けてきた稀有なバンドということで。これを機に過去の作品についてつらつら書いてみたいと思います。その前半。



ジョイライド

ジョイライド

ヨーロッパでデビュー後、逆輸入という形になったデビューミニ作。


当時は The ProdigyThe Chemical Brothers と比較されていたということで、音の方もそれらと直結するロッキンブレイクビーツが主体。しかしながら単なる模倣には終わらず、この頃からすでにリズムに対しては強い拘りを持っていたのだなと再確認させられる、即効性の強いダンスロック曲が揃っています。どの曲もとにかく、非常にリズムが強靭。生音のダイナミズムを活かしながら、フリーキーなエディットによって自在にフェイクを挟む。その硬く鋭いビート一打一打がことごとくヒットし、身体を蜂の巣にしていくかのよう。低く迫るクールネスが徐々に熱を帯びて、いつの間にかフロア全体をその熱で満たしていくような感覚。タイトル通りダブ由来のミステリアスな音響を導入した 「The Wonderful Wizard Of Dub」 以外はアッパー曲で占められており、微妙な BPM の違いこそあるものの、そのアグレッションは揺らぐことなくダイレクトに響いてくる。 「97年当時の最先端」 ということで今聴くと若干懐かしさを感じる部分もあるのですが、それを差し引いても有効性は今なお十分に感じられると思います。


Rating: 7.8/10



OUT LOUD

OUT LOUD

「Joyride」 に続き、本格デビューとなった初のフルアルバム。


「Joyride」 はミニアルバムということで (それでも40分ありましたが) ほぼ攻めの姿勢で突っ切った内容でしたが、今作ではその路線を引き継ぎつつ、さらに拡張/発展させてフルレンスの中で抑揚をつけ、さらに完成度を高めてきています。硬く研ぎ澄まされたブレイクビーツが身体を突き上げるのはもちろん、今回はダブ的音響性が全編に渡って導入されており、単にアグレッションや享楽性を求めるのではない、深い奥行きのあるサウンドがその熱をより中毒性の高いものに仕上げています。深い闇の底へとハイスピードで潜っていくような、神経を痺れさせるスリルに満ちたムード。 「Batter The Jam No.3」 や 「An Owl」 ではサックスを用いたジャズ的アプローチも見られ、かと思えば 「Oneness」 では直球デジロックを叩きつけたりと、楽曲の幅を押し広げて多角的に攻めてくる。そしてラスト 「On The Painted Desert」 はストリングスを導入し、サイケデリックで幽玄な音世界を展開する大曲。もはやダンスフロアの枠にも収まらない、彼らの創作意欲がさらに加速度を増して放たれた傑作です。


Rating: 8.2/10



UMBRA

UMBRA

2年3ヵ月ぶりとなる3作目。この頃はロンドンにプライベートスタジオ持ってましたね。


ここで大胆な方向転換です。ダンスフロア向けの所謂ブレイクビーツというものはほとんど排除され、ドラムの生音にエディットを交えて使用。ダイナミックな荒々しさと流れるようなスピード感、その中で深くうねるグルーヴを重視した、フリージャズに通じるスタイルにシフトチェンジしています。またダブ的音響もさらに緻密な奥行きを見せ、効果的に挿入されるストリングスやサックスなども相まって、夜の淵に深く潜っていくようなダークな深さ。ジャズやダブといった要素は前作にも見られましたが、その比重が一気に増大。もはやテクノとロックの融合といった話では収まらない、実験的かつ内省的な内容になっています。音の厚みではなく硬さ、そして全体を覆う空気が容赦なくへヴィ。中でも一番の目玉はやはり4曲目 「Your Realitys' A Fantasy But Your Fantasy Is Killing Me」 。躍動と冷徹が交錯する中で Chuck D の挑発的なフロウが軽快に乗り、一層研ぎ澄まされたそのアグレッションは聴いてて鳥肌が立つほど。殺気とも言えるほどの緊張感に貫かれた、ブンサテのカタログ中最もハードコアな一枚。


Rating: 8.8/10



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