Akira Kosemura 「grassland+」

grassland+

grassland+

東京在住のプロデューサー/コンポーザーによる、2010年発表の4作目のリマスター再発盤。


アコースティックピアノの澄んだ響きを主とし、空間を優しく包むエレクトロニカ/アンビエント、鳥の囀りや風のざわめきといった環境音、そして時には可憐な歌声。静謐さを湛えながら視界が徐々に開けて光が差し込み、表題通りに雄大な草原を想起させる。そういった彼の目指す世界観が十分に表現されたフォークトロニカ/ポストクラシカルの傑作です。 「light」 「little dipper」 といった歌モノは全体の流れの中でもハイライトとして位置づけられていますが、それ以外のタイトル曲 「grassland」 や 「petrarca」 といったインスト曲においても、日本人らしい歌心がサウンドの端々から感じ取れます。癒し系などと括ると途端に陳腐な印象になってしまいますが、このベタに寄り過ぎない上品なメロウさと緻密な音の練り込みがあるからこそ、表現する世界観に奥深さが出ているのだと思います。従来の本編に特典として配布していた4曲が追加ということでなかなかボリューミーな内容となっていますが、受け手側はそのサウンドに真っ向から対峙するも良し、日常の BGM としてながら聴きするも良しと、広い窓口から如何様にも浸れる15曲。

Rating: 8.5/10