TOY「Clear Shot」
- アーティスト: Toy
- 出版社/メーカー: Pias America
- 発売日: 2016/10/28
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
元々70年代サイケデリックロックを基盤としている彼ら。この新作ではその深遠なサウンドがますますラフに、粗野に、それでいて色味の褪せたビターなものと化しています。曲の始まりは至ってシンプルな、ジャカジャカ掻き鳴らすギターとスクエアなリズム。それが進行していくうちに少しずつ音の厚みを増し、気が付いた頃にはすっかり轟音の重層に巻き込まれている状態。要所ではシンセも用いられているものの、それが華やかな印象を与えていると言うよりは、曲全体の夢見心地で浮世離れした雰囲気を助長し、聴き手との間に幕を隔てた遠い幻想のようなイメージを強めています。その幻想はジャケット写真のように淡く滲み、細部を掬い取る前に翻弄されて終わってしまう。ある意味バンドが本来持っていた毒々しさがさらに深みを増したとも言えます。特に印象的なのは「Dream Orchestrator」。比較的快活な疾走感に乗ってバンドサウンドが膨れ上がっていく、そのオプティミスティックな恍惚と果てしないスケール感。これ見よがしではなく体の奥底からジワジワと沸き立ってくる、これこそがサイケデリアの真髄か。
Rating: 7.6/10