WRENCH 「weak」

weak

weak

1992年結成の4人組による、11年半ぶり9作目。


前作「nitro」はギターリフと縦ノリグルーヴが先導するハードロック要素の強い作品でしたが、今作ではそれよりもエレクトロニクスの比重が増し、それと同時にプログレからの影響も強く出ているのが特徴。いずれの楽曲もアンサンブルは複雑怪奇な変拍子を軸としながらヤケクソとも言える勢いで爆走し、さらにはそこにトランシーなシンセサウンドの重層も覆い被さって、テンションの高さに拍車を掛けながら壮大なスケールへと拡張していく。様々な音のレイヤーが過剰なエフェクト加工を施されては重ねられ、時にはほとんどノイズ一歩手前の崩壊寸前にまで到達し、それでもギリギリの所で空中分解せずに着地する、何とも豪快極まりない演奏のオンパレードです。しかしその音のパワフルさに反してアルバム表題は「弱者」。歌詞の中でも SHIGE は「オレは欠点と嫉妬から成り立っている」「オレは本物の偽物だ」とネガティブな胸中を曝け出す場面が度々。ただその内なる闇も腹の底から全力で叫び切ればポジティブなエナジーへと反転する。そのプリミティブな解決法を極端なまでに体現しているという意味でも、彼らは快楽を手にする術を熟知していると言えます。

Rating: 8.1/10



WRENCH / KIRAWAREMONO