Hatchie 「Keepsake」

Keepsake

Keepsake

オーストラリア出身のシンガーソングライターによるデビュー作。


何を今更という感じではありますが、先進的表現として Cocteau Twins に端を発したドリームポップというジャンルは、M83 による拡大解釈、Grimes による洗練/深化など、時代の荒波に揉まれながら少しずつ変容し、今ではすっかりポップスにおけるひとつのスタンダードとして定着した感があります。そしてこのニューカマーもそうした流れを汲み、最前線に立つアクトのひとつ。もうオープナー「Not That Kind」の時点で既に、幻惑的な浮遊感に満ちたクリーントーンの響き、その一点の曇りも衒いもない眩しさで失明しそうな勢い。またそれに続く「Without a Blush」や「Unwanted Guest」などに至っては、それこそ Cocteau Twins 、あるいは初期 Lush を彷彿とさせる妖しさも加味され、完全に80~90年代初頭のノスタルジアを意識した中年キラーサウンド。しかしながらいずれの楽曲もメロディがぼやけることなく明快な瑞々しさで、ヴォーカルはバックの音に掻き消されずに、むしろ凛とした存在感を持ってはっきりと言葉を伝えている。この明らかにオーバーグラウンドを見据えたポップスとしての正統的な佇まいは、やはり現代ならではという印象がありますね。

Rating: 7.3/10



Hatchie — Obsessed (Official Video)