ムック 「葬ラ謳」 「是空」 「朽木の灯」


昨日に続いてムック祭りその2です。自主レーベル立ち上げからメジャー進出にかけて、ダーク&ヘヴィ路線を邁進する3枚。



葬ラ謳

葬ラ謳

数枚のシングルを経て、1年8ヶ月ぶりの2作目フル。


色んな面において 「痛絶」 からさらに進化を遂げてます。今までは良くも悪くも荒っぽい演奏だったけど、演奏力が向上したためバンド全体の一体感がより強く出てますね。また篭り気味の音質も含めて細部まで凝った音作りが成されていて、楽曲の精度が高くなってます。そのため 「スイミン」 「黒煙」 は前ヴァージョンよりもずっと説得力が増してるし、それ以外にも音、歌詞共によりヘヴィになった王道チューン 「絶望」 「幸せの終着」 、ラフ寄りのギターロック 「ママ」 、ジャジーな 「嘘で歪む心臓」 、軽快なメロコア路線 (でも歌詞はヤバい) 「前へ」 、哀愁フォーク路線の 「帰らぬ人」 等々、さらにヴァラエティに富んだ充実の楽曲群。狙ってる音のニュアンスが明確なので各々の粒立ちが良いというか、個性がハッキリと出てる。 「およげ!たいやきくん」 も笑えるくらい彼らの曲として成立してますしね。そして大ラス 「ズタズタ」 は過去最高値の怨念を鉄槌のようなヘヴィネスと共に叩きつける名曲。歌詞の表現もよりストレートになってきてるため世界観が明確になっていて、それも重さの増加の要因になってると思います。結成以来の方向性が見事に結実した傑作。初めて聴くならこれが良いんじゃないかと。


Rating: 9.6/10



是空

是空

初のメジャー作品となった3作目。


ここで少し方向性のシフトチェンジが図られてます。今まではローファイで湿っぽい雰囲気が漂ってたのが、ここではメタル要素が大幅に増してさらに攻撃性の増した音になってます。硬質かつクリアに研ぎ澄まされた、今までとは違う質感のヘヴィネス。それに伴ってスケール感も大きくなったと思います。歌詞が暗黒なのは相変わらずですけども、今までは内に籠もりながら病的に毒を吐くといった感じだったのが、今回では外に向かってアグレッシブに攻撃性を撒き散らしてる風に変わったというか。特に 「茫然自失」 は過去最高級に凶暴なゴリゴリのリフが鮮烈で、サビでは厳ついデス声も飛び出したりと、新しい側面をハッキリ打ち出した秀曲。また 「我、在ルベキ場所」 はグッと外に開ける壮大さすら感じるメロディでこれも新鮮だし。でも後半になると曲の練り込み具合の足りなさが気になりだして勢いが削がれてしまう所も。アイディアを活かしきれてないというか。個人的には前作と次の 「朽木の灯」 の橋渡し的な作品、という印象です。


Rating: 7.2/10



朽木の灯

朽木の灯

4作目。曲順そのままのライブ盤もありますけど、そっちは未聴。


前作のメタル路線を継承し、メロディはさらにスケール感を増して大きな広がりを見せ、それと共にバックの演奏は完全にヘヴィに貫かれてます。歌詞もより感情的というか、外部に対して直接的に問いかけたり痛みを吐露するような表現が多くなり、音の鋭利さを一層強調してるような。特に幕開けの 「誰も居ない家」 「遺書」 は息の詰まりそうな重さ、暗さで、濃度がいきなりピーク値に達した感が。また獰猛なアグレッション剥き出しの 「濁空」 「幻燈讃歌」 からメロウな切なさが立った 「暁闇」 への畳みかけも凄い。まるで緊張感が途切れることなく、押し潰されそうな重厚さがあります。そんな中 「モノクロの景色」 はポップなメロディに比重が置かれてて、比較的聴きやすく異色な印象。また 「名も無き夢」 は青春パンク的なド明るいリフやメロディが別の意味で異色ですが、こっちはむしろ違和感の方が強いかな…。でも静→動の移行で心に痛いカタルシスに溢れた 「溺れる魚」 や、エモーショナルな絶叫とドゥーミーな曲調で闇の底まで堕ちた 「朽木の塔」 に至るまで、一本の筋はビシッと通されてます。とことんまでやりきった感もある、色んな意味でムックの作品中最も重いアルバム。


Rating: 8.8/10


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