Shohei Takagi Parallela Botanica 「Triptych」

cero のヴォーカリストによるソロユニットの初フルレンス。


今作を聴いて、真っ先に思い出したのは坂本慎太郎のソロ作品でした。もちろん表面的な音楽性を見れば共通点以上に差異も多々あるかと思いますが、精神性と言うか、目指している地平はかなり近似しているような気がして。楽曲は先鋭的なビート/グルーヴが幅を利かしている cero 本隊とは異なり、ブルースやジャズ、あるいはボサノヴァといった懐古趣味的な要素がメイン。全身に酔いが回り切ったかのような力の抜け方で甘美なメロディをなぞり、心地良い揺らぎの中にそこはかとなく艶めかしさも漂わせる。ただそういった曲調を敢えて洗練から遠ざけるように、ぼんやりと輪郭の滲んだローファイな音作りが全編に施されており、エレクトロニカ通過後の立体的な音響性も相まって、底なし沼にズブズブと沈んでいくような、背徳感と表裏一体のサイケな恍惚がやたらと滲み出てくる。単なる古き良き時代のフックアップではない。かと言って時代の一歩二歩先を読んだアプローチというわけでもない。未来でも過去でもなく、もはやこの世ならざる世界を見ているのではないか。そんな良い意味での得体の知れなさが、坂本慎太郎の境地に繋がってくるわけです。

Rating: 8.0/10



Shohei Takagi Parallela Botanica 1st Album "Triptych" 【Official Trailer #1】