Grizzly Bear 「Painted Ruins」

PAINTED RUINS

PAINTED RUINS

ブルックリン出身の4人組による、約5年ぶり5作目。


MV はユーモラスで不可解だったりするけれど、実際の音の方は随分とストイックな印象を受けます。おそらくゼロ年代インディロックシーンにおける主流のテーマのひとつでもあった、60~70年代サイケ/フォークロックとエレクトロニカ要素の融合。そこに前作「Shields」ではブルース/ハードロック的ニュアンスも加わっていたのが、今作では比較的シンセサウンドの方に比重が傾いているように思います。空間的な厚みを持ったレイヤーや、一種不気味にも映る冷徹なサンプルビート。それらは立体的な音響空間の中で生のアンサンブルと密接に混ざり合い、ちょうど「Amnesiac」辺りの Radiohead を思わせるような、インテリジェントでありつつ情感に満ちた新種のアートロックを展開しています。ますます密度を増して複雑なニュアンスとなり、眼前一杯にまで膨れ上がるような演奏の凄味と、内省的な憂いを湛えたハーモニーの美しさ。これまでの活動を踏まえてなお自らの個性を強固にしていく様は、昨今の流行とはキッパリ距離を置くという辛辣な宣言のようにも見える。広い門戸を保ちながら深みを増し、内側にも外側にも世界観を拡張した力作です。

Rating: 8.2/10



Grizzly Bear - Mourning Sound (Official Video)