Panda Bear 「Buoys」

Buoys

Buoys

米国ボルチモア出身のシンガーソングライターによる、約4年ぶり6作目。


ここ最近の彼のソロや Animal Collective 本隊の作品と比較しても、今作は随分と様相が違って見えます。これまでの彼のトレードマークでもあった、空間を埋め尽くすシンセサウンドの重層によるサイケデリアから大きく脱却し、今回はむしろ音の隙間を活かしたシンプルな音作りが特徴。全編においてアコースティックギターの音色が用いられているという点では「Sung Tongs」辺りのフリークフォーク期への回帰とも受け取れそうですが、両者を聴き比べてみるとやはり微妙に質感は異なる。柔らかなギターストロークと奇矯でファニーなシンセ音が水と油のように反発しながら、同じ空間の中で同列に共存しているその音像からは、かつてのドリーミーな暖かみや聖性ではなく、徐々に水の底に沈んでいくような冷たさ、仄暗さを感じます。Noah Lennox の歌声も今まで以上にクリアな輪郭を持ち、ギター/シンセ/ヴォーカルがそれぞれ独立したテクスチャーとして立体的に組み込まれ、シュールでいてそこはかとない侘しさを醸し出す。それはフリークフォークから様々な実験開発を経た後に辿り着いた、また別の名前のフォーク変異種と言えるものでしょう。

Rating: 7.4/10



Panda Bear - Token (Official Video)