人間椅子 「異次元からの咆哮」

1年8ヶ月ぶりとなる20作目。


和嶋慎治はとにかく自分の内面を掘り返す。江戸川乱歩夢野久作といった怪奇小説はもちろん、そこかしこに頻発する仏教用語、地獄や鬼や妖怪といった郷土信仰、果ては UFO やら超能力やらのオカルトの類まで、少年~青年期から現在に至るまでに自分の中に蓄積してきたインプットをとことん掘り漁り、そこから世間一般へ、同時に自分自身に向けてのメッセージを発する。リード曲「虚無の声」では「不変のものは何一つないからこそ愛おしい」と歌い、「痴人のモノローグ」では自らを馬鹿者と卑下しながらも特に分かりやすい訓示を説いている。なにぶんハードロックが身上なのでおどろおどろしいイメージを存分に盛り付けてはいますが、その奥底から発せられるエナジーは極めてポジティブなものなのですね。だからこそ自分は人間椅子の音楽だったり、彼らのキャラクターに愛着を覚えているのだと思います。ただ音的には、機材や奏法の面では様々な工夫を凝らしているようですが、曲自体はいつもの人間椅子をほぼそのまま踏襲しており、特にヘヴィで濃厚だった前作と比べると少し落ちるかなと。安定の内容ではあると思います。

Rating: 7.2/10



人間椅子「虚無の声」MV(10/4発売 AL『異次元からの咆哮』より)