St.Vincent 「MassEducation」

MASSEDUCATION

MASSEDUCATION

US 出身のシンガーソングライターによる企画盤。


内容は昨年リリースした「MASSEDUCTION」のアコースティック・ピアノ弾き語りヴァージョン。そもそも「MASSEDUCTION」という作品が「精神病棟の SM 嬢」というキャラクター・コンセプト、奇矯なシンセサウンドを多用したトリッキーなアレンジ、原色のラバー素材に包まれたフェティシズムの集合体のようなヴィジュアル・イメージなど、様々な方向から尾ひれを付け加えた総合的アートポップといった趣の作品だったので、それらの装飾を取っ払って歌詞とメロディのみを残した今作を発表したのは、おそらく Annie Clark の中で必然的というか、この作品まで含めて「MASSEDUCTION」というコンセプトの一環なのだと思います。それで丸裸の状態となった楽曲に残ったものはと言うと、原曲よりも切実かつ生々しい痛みを伴って表れたエモーションの数々。「New York」や「Slow Disco」のようなバラードは分かりやすいですが、エレクトロニクスの役割が大きかった「Pills」や「Sugarboy」にしても、ピアノの弦を弾くなど変則的な奏法を交えながら、原曲とは全く別の厳かさを見せています。「MASSEDUCTION」の世界をより深く味わうための裏の顔。

Rating: 7.0/10



St. Vincent - Savior (piano version) Official Video