The fin. 「There」

There※初回限定盤(スペシャルZINE同封)

兵庫出身の3人組による、3年3ヶ月ぶり2作目。

水の中に漂うような心地良い浮遊感、アーバンな洗練を受けながら何処か幻想的でもあるプロダクション。デビュー当初から見せていたアンビエント／チルウェーブ要素はすっかりアンサンブルの中に咀嚼され、敢えて音の隙間も活かされたアレンジは風通しの良いもので、なんとも自然に身体の中へと浸透していく。なおかつ土台を支えるリズム隊は小気味良いファンキーな躍動感を打ち出し、ダブステップやトラップを通過したが故の深いタメを利かせたグルーヴも見られるなど、エレクトロニックな質感と人力の揺らぎが絶妙な配分で釣り合った演奏は、理知的でありつつフィジカルにもジワジワと有効。いつの間にやらメンバー全員がイギリスに移住していたとのことで、実際に現地の空気感に染まることで得られる刺激が多くあったのでしょう。海外インディロックあるいはオルタナティブ R&B 勢へのシンパシーが増幅された面もあり、ただ昨今の潮流への追随に留まることなく彼らは独自のバランス感覚を磨き上げ、場面によっては後期フィッシュマンズにも似た、この世ならざる深遠の美しさを見せています。遂にここまで来たかという境地。

Rating: 8.1/10

The fin. - Shedding